IMOA (International MOlybdenum Association) |
国際モリブデン協会(IMOA)は東京で開催された年次総会において、今後10年間における世界的なモリブデン使用量の成長予測を下方修正しました。自動車および航空宇宙産業の継続的な課題がその主な要因です。世界の自動車生産は2033年までに11%増加すると予測されていますが、サプライチェーンの問題やコスト負担の懸念により、以前の予測よりも成長率が鈍化しています。2022年の予測では、2021年から2031年の間に世界の自動車生産が最大30%増加するとされていました。
同様に、モリブデンの主要な消費者である電気自動車(EV)市場も成長が鈍化する見通しです。ブルームバーグ・ニューエナジー・ファイナンスの予測では、2024年から2027年の間に平均年率21%の成長が予測されており、2020年から2023年の61%の増加に比べて減少しています。これは、内燃機関からEVへの移行が進む中で、自動車業界における長期的なモリブデン消費量の減少を意味します。
航空宇宙と再生可能エネルギーが需要を支える
一方、航空宇宙および防衛産業は今後10年間でモリブデン需要を支える主要な要因と見られていますが、エアバスやボーイングは供給チェーンの制約により生産量が制限されています。それでも、これらの企業はワイドボディジェットの需要が今後20年間で2倍になると予測しています。対照的に、風力発電を中心とした再生可能エネルギーは、合金鋼におけるモリブデン需要を促進すると期待されています。国際エネルギー機関(IEA)によると、2024年6月の再生可能電力生産は前年比14%増加し、その中でも風力発電は28.1%の上昇を見せています。
しかし、機械工学や建設業界では、高金利や中国の不動産市場の低迷がモリブデン需要を抑制しています。中国の不動産セクターへの投資は前年より10.2%減少し、新規プロジェクトの開始は22.5%減少しました。これにより、鉄鋼需要が低迷しています。
IMOAのデータによると、2023年の世界のモリブデン消費量は1%増の6億3,000万ポンドに達し、生産量を上回りました。中国は依然として最大の消費国および生産国であり、南米では銅生産の減少に伴いモリブデンの生産も減少しました。一方、北米の生産量はほぼ変わらず推移しています。
生産プロジェクトの拡大により供給が増加する見通しがあるものの、成長率が予想を下回っているにもかかわらず、モリブデン市場は今後10年間、需要の強さによって引き締まった状態が続くと予測されています。