インドネシアのHPALによるニッケル生産拡大、課題に直面

HPAL

インドネシアは今後数年間でニッケル生産をさらに拡大する見込みであり、特に高圧酸浸出(HPAL)技術を用いた生産能力の増強に注力しています。しかし、この計画には硫酸の供給不足や廃棄物処理の適切な管理といった課題があり、スムーズな実現が難しい状況です。それにもかかわらず、ニッケルの世界市場で供給過剰が予測されている中でも、生産量は増加すると見込まれています。

硫酸供給と廃棄物処理が主要な課題

HPALプロセスは硫酸を用いてニッケルやコバルトを鉱石から抽出し、ミックス水酸化物沈殿物(MHP)を生成します。MHPはニッケル硫酸や電池向けの原料として必要不可欠です。市場関係者によると、インドネシアの2024年のMHP生産量は、2023年の約26.9万トンから32.5万~34.5万トンに増加すると予想されています。今後数年間で複数のMHPプロジェクトが稼働する見込みで、生産量は2026年までに80万~90万トンへと3倍に増加すると、インドネシアの海事・投資調整省のセプティアン・ハリオ・セト副大臣は、ロンドンの金属イベントで述べました。

生産量の増加にはより多くのニッケル鉱石と硫酸が必要となり、リモナイト鉱石の供給が急速に減少する可能性が懸念されています。これに対してインドネシア政府は、鉱業関係者との協議を予定しています。

現在、インドネシアではフアイユエとフアイフェイ(華飛)のプロジェクト、GEMのQMBプロジェクト、リジェンドのHPALプロジェクトの4つの施設が稼働しています。これらの施設では、主に中国や韓国から輸入した硫酸を使用していますが、コストの増加に伴い、ハルマヘラ・ペルサダ・リジェンドのような生産者はより安価な硫黄を選ぶようになりました。ジャワ島にあるフリーポート・マクモランのマニャール製錬所や、西スンバワ県のアマン・ミネラル・ヌサ・テンガラ(AMNT)の銅製錬所の稼働が2025年末までに300万トンの酸供給能力を追加することで、供給問題が緩和されると期待されています。

もう一つの大きな課題は、廃棄物処理です。環境・社会・ガバナンス(ESG)基準に対する厳しい目が向けられており、HPALプロセスで生成される大量の廃棄物が問題視されています。エネルギーコンサルタント会社ウッドマッケンジーによれば、HPALを用いて1トンのニッケルを生産するごとに1.4~1.6トンの廃棄物が発生します。廃棄物の処理方法としては、尾鉱ダム、海洋深層投棄、乾式スタッキングの3つが一般的ですが、乾式スタッキングがより持続可能と見なされています。それでも、インドネシアの季節的な降雨や地震活動は、廃棄物の安全な貯蔵にとって大きなリスクとなります。

HPAL生産の拡大を円滑に進めるためには、安定した硫酸の供給を確保し、持続可能な廃棄物処理方法を採用することが不可欠です。これらの課題に対応することが、インドネシアのニッケル生産の成長を維持し、厳しいESG基準を満たすための鍵となるでしょう。

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