ワンラン、新たに米国にLFP電池工場を建設へ


中国の主要リチウム鉄リン酸塩(LFP)正極活物質メーカーである湖北万潤(Hubei Wanrun New Energy Technology)は、米国サウスカロライナ州に新たな生産工場を建設する計画を発表しました。この工場は、総額1億6,760万ドルの投資が予定されており、年産5万トンの生産能力を持つことになります。工場の建設には30カ月がかかり、2028年に稼働開始を目指しています。初期フェーズでは年産9,000トンの生産能力が予定されています。

万潤は既にサウスカロライナ州に完全子会社「Wrestore Technology」を設立し、工場建設を進めています。今回の動きは、中国と西側諸国間の地政学的な緊張と、中国で生産された材料への制限が背景にあり、中国のバッテリーメーカーが海外市場に進出する傾向が強まっていることを示しています。

地政学的リスクとワンランの戦略的拡大

中国と西側諸国との地政学的な対立と、材料輸出制限の影響を受け、中国企業は海外市場への進出を強化しています。万潤の米国進出は、中国のEVEエナジーが同じく米国ミシシッピ州にLFP電池工場を建設中であることと一致しています。EVEエナジーの工場は年産21GWhの能力を持ち、2026年の稼働開始が予定されています。

2023年上半期に万潤が出荷したLFPは7万8,000トンで、前年比24%の増加を記録しました。同社は、CATLやBYD、国軒高科(Gotion High-Tech)などの主要リチウムイオン電池メーカーと強固なパートナーシップを築いています。8月の中国国内では、LFP電池が市場の大半を占め、生産量の75%、設置量の74%を占めました。中国外のリチウムイオン電池および電気自動車メーカーは、従来、三元系正極材(CAM)を主に使用していましたが、LFPへの関心が高まっており、今後LFP市場は世界的に拡大すると見込まれています。

地政学的リスクが高まる中、万潤の米国工場はLFP技術のグローバルな普及を支える重要な役割を果たすと期待されています。


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