航空宇宙不足：認証とリスクが解決を難化
中国のチタンスポンジ産業は急成長しており、2022年の生産量は17万5000トンから2023年には21万8000トンへと増加した。これは国内の供給過多に起因するが、この余剰が世界的な需要急増を補う可能性を秘めている。日本、サウジアラビア、カザフスタンの主要生産者はすでにほぼフル稼働に近い状況であり、エアバスのような主要航空宇宙企業も供給の安定性を確保するために新たな選択肢を模索している。
だが、航空宇宙業界の厳格な認証プロセスが大きな障壁となっている。標準品質（SQ）とプレミアム品質（PQ）チタンスポンジの認証取得には最短で3年以上かかり、エンジンディスクのような高ストレス部品に必要なPQ認証はさらに長い時間を要する。エアバスは中国製チタンの検討に前向きな姿勢を見せているが、最終的な認証判断はインゴットメルターやエンジンメーカーに委ねられており、さらなる慎重さが求められている。
政治的背景と法的対応
技術的な障壁に加え、中国の供給者としての位置づけは地政学的な懸念によってさらに複雑化している。アジア太平洋地域での緊張が高まる中、中国製チタンスポンジへの依存は将来的な制裁や貿易規制の影響を受ける可能性がある。米国では、中国製チタンスポンジの輸入が関税の負担を受けながらも増加しているが、立法的な取り組みがこの依存を抑制しようとしている。最近の「アメリカのチタン確保法」案は、チタンスポンジの標準15%の関税を撤廃し、中国製には追加25%の関税を維持する方針を示している。この政策は、中国供給者への依存を抑制し、米国のチタン供給網を保護するためのものである。
欧州の状況：費用対効果のある解決策を模索
一方で、欧州では自主的な関税停止措置により輸入関税が免除されているため、中国のチタンスポンジが供給網に組み込まれる可能性が高まっている。米国のような高関税がないことで、欧州は中国の供給を受け入れる市場となり得るが、供給の安定性と地政学的なリスクのバランスを取る複雑な判断が必要とされる。
中国のチタン産業が拡大する中で、世界の航空宇宙業界はそのリスクと利益のバランスについて意見が分かれている。今後数年の間、認証の課題と国際情勢がチタン供給網の行方を大きく左右するだろう。
