中国の鉄鋼市場、刺激策の中で弱含みの見通し



中国の鉄鋼価格は9月下旬の数年ぶりの安値から反発しましたが、市場全体の見通しは依然として厳しい状況にあります。国内需要の低迷、不動産投資の減少、さらには貿易摩擦が影を落としています。

価格は反発も、需要は停滞

中国人民銀行は9月24日、預金準備率(RRR)の0.5%引き下げと住宅ローン金利の削減を発表し、鉄鋼価格は9月下旬に底を打ちました。しかし、国家統計局(NBS)によれば、2023年1月から9月の不動産投資は前年比で10.1%減少し、新規建築プロジェクトの面積も22.2%減少しました。

特に新規建設やインフラプロジェクトへの依存度が高い国内の鉄鋼需要は、既存住宅の再活用に注力する政府方針の中で回復が遅れています。

生産量は増加傾向

価格の反発を受け、中国の製鉄所は生産量を増加させました。9月初旬には1トンあたり150〜200元の損失を出していたのが、10月初旬には200〜250元の利益に転じました。また、10月中旬には週次の鉄筋生産量が240万トンに達し、6月下旬以来の最高水準となりました。高炉や電炉の稼働率も2カ月ぶりの高水準に達しました。

ただし、北部地域で暖房シーズンが始まる11月中旬以降、建設向け鉄鋼需要は弱まると予測されています。

輸出市場にもリスク

2023年1月から9月の鉄鋼輸出は前年比21.2%増の8071万トンとなり、好調を維持しています。しかし、トルコ、インド、ベトナム、韓国などが反ダンピング規制を強化したことで、中国鉄鋼への障壁が増加しています。また、クリスマスシーズンを控え、12月以降の輸出契約の減速が懸念されています。

刺激策の効果は限定的

財政部(MOF)は2024年に特別国債1兆元(約1412億4千万ドル)を発行し、国内需要拡大のための包括的な政策パッケージを導入すると発表しました。また、住宅・都市農村建設部(MHURD)は、今年の改修プロジェクト用住宅を100万戸増加させる計画を明らかにしました。

しかし、2016年から2018年の年間600万戸を超えるピーク時と比較すると、この規模は控えめです。また、担保と工事の進捗が十分なプロジェクト(「ホワイトリスト」プロジェクト)への融資増額は、限定的な効果にとどまると見られています。

一方、北京、上海、深圳を除くほとんどの都市で住宅購入制限が解除され、不動産取引の活性化が期待されています。

市場の展望:慎重な楽観論

上海の熱延コイル(HRC)価格は、10月7日から昨日までに1トンあたり230元(6.3%)下落し、3420元となりました。市場関係者は、9月の安値を割る可能性は低いとしつつも、11月と12月にはさらなる下押し圧力が予想されると指摘しています。

中国の鉄鋼市場が本格的に回復するには、新たな投資と国内需要の成長が不可欠です。貿易摩擦が輸出の成長に影を落とす中、鉄鋼業界は厳しい現実に直面しています。

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