ACESデルタプロジェクト—三菱パワーの視点から見る革新

 ACES Delta

三菱パワーアメリカとシェブロンが共同で推進するACESデルタプロジェクトは、アメリカ西部にグリーン水素を供給するための大規模な水素ハブを構築しています。このプロジェクトは、シェブロンが2023年9月にMagnum Developmentを買収した後、本格的に進行中です。中心となるのは、ユタ州デルタに建設中の「Advanced Clean Energy Storage(ACES)」ハブであり、塩洞窟を利用した水素貯蔵施設として、300GWh以上の容量を備えます。稼働後にはアメリカ最大の水素貯蔵施設となり、Intermountain Power Agency(IPA)の石炭火力発電を代替する水素対応型発電所に供給を行います。

この発電所は2025年から運転を開始予定で、30%のグリーン水素と70%の天然ガスを混合した燃料を使用し、2045年までに100%グリーン水素への移行を目指します。ACESプロジェクトは再生可能エネルギー由来の水素を生産、貯蔵、送電する世界初の試みであり、アメリカ西部全体のエネルギー需要を大きく変える可能性を秘めています。


プロジェクトの進化と未来の挑戦

この構想の起源は1970年代に遡ります。当時、地質学者たちはユタ州で巨大な塩層を発見しましたが、石油の見込みがないと判断され記録が放置されていました。しかし2007年、Magnum Developmentの地質学者ロブ・ウェブスター氏がこれを再発見し、エネルギー関連商品貯蔵の可能性に着目しました。その後、2017年に三菱パワーが参画し、水素貯蔵の構想が現実化しました。

2022年6月の着工以降、プロジェクトは順調に進んでいます。塩洞窟の掘削は予定を前倒しで完了し、地下約1マイルの深さにエンパイアステートビル規模の貯蔵空間が完成しました。また、米国エネルギー省からの5億400万ドルの融資を得て、世界最大級の水素貯蔵施設建設が進行中です。2023年には水素対応型ガスタービンが設置され、電解槽も据え付けられました。2025年の稼働開始後、IPAの新発電所と連携し、30年以上続いた石炭発電に代わるエネルギー供給を担う予定です。

水素技術の普及には、適切な貯蔵と輸送インフラの整備が不可欠です。ACESデルタプロジェクトでは、塩洞窟を利用した貯蔵技術に加え、パイプラインを通じて水素を供給する構想を掲げています。この塩層は70~100キャビンを収容可能で、アメリカ西部全体の需要を賄うポテンシャルを秘めています。三菱パワーとシェブロンのパートナーシップが新たな再生可能エネルギー時代を切り開きつつあります。

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