豪州、10億豪ドルをグリーンアイアンに投資—鉄鋼産業の脱炭素化推進

Whyalla Steelworks


オーストラリア連邦政府は、鉄鋼産業の脱炭素化を促進するため、「グリーンアイアン基金(Green Iron Fund)」に10億豪ドル(約970億円)を投じることを発表した。この基金は、グリーンアイアン(環境負荷の低い鉄鋼製造)分野の先駆的プロジェクトを支援し、民間投資を大規模に引き出すことを目的としている。
今回の資金のうち5億豪ドルは、南オーストラリア州ワイアラ(Whyalla)製鉄所向けに割り当てられ、残る5億豪ドルはオーストラリア国内の既存施設や新規プロジェクト(グリーンフィールド)に向けて提供される予定だ。

製造業強化とエネルギー転換の推進

クリス・ボーウェン気候変動・エネルギー相は、「エネルギー転換は、製造業における雇用の拡大をもたらす」と述べ、以下のようにコメントした。
「ソフトウェア開発から製鉄、製錬に至るまで、オーストラリアの製造業従事者にとって大きな利益をもたらす変革が進行中です。私たちは、再生可能エネルギー投資の拡大を通じて国内製造業を支援し、必要な技術を国内で生産できるようにします。」
「“Future Made in Australia”のビジョンは、豪州が世界の中で確固たる地位を築くことにあります。我々の資源を活かし、国内でインフラを整備し、持続可能な未来を実現するのです。」
連邦政府は、再生可能エネルギープロジェクトが地元の労働力を活用し、オーストラリア国内での製造を推進するよう、地域コンテンツ要件を導入する。
現在、オーストラリアの粗鋼生産量は年間約570万トンにとどまり、製造能力の拡大が急務とされている。政府は今回の5億豪ドルの投資を通じて、鉄鋼業界の製造能力拡大を後押しし、エネルギー転換に伴う新たな機会を活かす考えだ。
この資金は、オーストラリア再生可能エネルギー庁(ARENA)の「イノベーション基金(Innovation Fund)」を通じ、メリットベースの助成金として提供される。対象プロジェクトには、風力発電用タワー製造、バッテリー・蓄電技術、水素電解槽(エレクトロライザー)、エネルギー効率技術、電化技術、送電ケーブルなど、クリーンエネルギー転換に不可欠な技術が含まれる。

西オーストラリア州の優先支援を求める声

西オーストラリア州鉱物・エネルギー会議所(WA CME)は、今回の基金が南オーストラリア州ワイアラへの支援を重視している点に理解を示しつつ、西オーストラリア州(WA)こそが最適な支援先であると主張している。
WA CMEのレベッカ・トムキンソンCEOは、「WAはすでに世界最大の鉄鉱石生産地であり、グリーンアイアンの主要製造拠点となる準備が整っている」と強調した。
「我々はアジアの製鉄所と強固な貿易関係を持ち、脱炭素化への移行を支援する立場にあります。さらに、多くの企業が大学との連携を通じて、グリーンアイアン技術の研究開発に多大な投資を行っています。」
また、WA政府は、クウィナナ(Kwinana)で進行中のネオスモルト(NeoSmelt)プロジェクトに7,500万豪ドルを投じるなど、グリーンアイアン推進の姿勢を明確にしている。
WA CMEが昨年12月に発表した「グリーンアイアン報告書」によると、WAでの大規模なグリーンアイアン生産は、2050年までに世界のCO₂排出量を1.2%削減し、オーストラリア全体の年間排出量とほぼ同等のカーボンオフセットを達成できると試算されている。
さらに、同産業は7,400億豪ドルの経済価値を生み出し、19,600人の直接雇用を創出する可能性があるという。
トムキンソン氏は、「WAの鉄鉱石生産者は、グリーンアイアンの可能性を認識し、大きな進展を遂げています。次のステップとして、新技術の商業化を加速させるため、WAを優先的に支援することが不可欠です」と述べた。
また、政府が豪州全体の鉱業を維持・拡大するための基本方針を確立することの重要性も指摘し、以下のような施策を求めた。
プロジェクト評価の迅速化
エネルギーコストの削減
環境規制改革の明確化
労働生産性を損なう産業政策の撤廃
「原材料を供給する鉱山なしに、下流加工(グリーンアイアンを含む)は成り立ちません。」

まとめ

オーストラリア連邦政府は、10億豪ドルの「グリーンアイアン基金」を通じ、鉄鋼産業の脱炭素化と国内製造業の強化を図る。ワイアラ製鉄所への5億豪ドルの割当のほか、全国のプロジェクト支援に5億豪ドルが用意されている。
WA CMEは、西オーストラリア州の鉄鋼業界を優先支援するよう求め、WAでのグリーンアイアン生産が世界のCO₂排出削減と経済成長に大きく貢献する可能性を指摘した。政府の迅速な対応が、オーストラリアの鉄鋼産業の未来を左右することになる。

コメントを投稿