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サンディエゴを拠点とする投資アドバイザリー企業Fortisは、2024年10月にカリフォルニア州裁判所へ提訴。ストラタシスが2020年のオリジン・ラボラトリーズ(Origin Laboratories, Inc.)買収の一環として合意された4000万ドルのアーンアウト(成果報酬)を支払わず、製品の発売を遅らせるなどして支払いを回避したと主張している。
ストラタシスのYoav Zeif CEOらは、連邦仲裁法(FAA)に基づき、仲裁が優先されるべきだと主張。ICDR(国際紛争解決センター)での仲裁手続きが2025年7月に予定されており、一部の主張は裁判所で扱うべきとしながらも、それらは仲裁の結果に依存するとしている。
一方でFortis側は、ストラタシスの対応を「手続き上の駆け引き」と批判し、不正行為に関する訴えは裁判所で審理すべきだと反論。同社が「法廷での審理を回避しようとしている」と非難している。
オリジン買収とアーンアウトを巡る争い
本訴訟の発端は2020年12月、ストラタシスがオリジンを最大1億ドル(現金および株式)で買収すると発表したことに遡る。当初、両社の関係は良好で、オリジン創業者のChristopher Prucha氏は「グローバル展開を加速できる最良の選択肢」と述べていた。しかし、その後関係は悪化し、Prucha氏と共同創業者のJoel Ong氏は2023年にストラタシスとの関係を解消した。
買収契約では、オリジンの知的財産を活用した製品・サービスの売上に基づき4000万ドルのアーンアウトが設定されていた。Fortisによると、ストラタシスはオリジン製品の発売を意図的に遅らせ、売上の計上をアーンアウト期間外にずらしたと主張。また、オリジンの技術を活用したものの同ブランドを冠していない製品の売上を除外し、支払いを回避したと訴えている。
ストラタシスは2022年2月に「Origin One Dental」などの製品を発売したが、その時点で同社はアーンアウト期間がすでに2021年7月1日に開始していたと主張。これに対しFortis側は、「事前の約束と異なる」として、「不正計画」と断じた。
訴訟の経緯と今後の展開
2023年5月、FortisはICDRでの仲裁を申請し、ストラタシスが売上計上を操作しアーンアウトの支払いを拒否したと主張。これに対し、ストラタシスはデラウェア州衡平法裁判所にPrucha氏やOng氏ら個人株主を提訴し、仲裁を阻止しようとしたが、2024年に裁判所がストラタシス側の主張を却下。同社に34万618.09ドルの弁護士費用の支払いが命じられた。
その後、ストラタシスは改めて仲裁の無効を求め、裁判手続きを優先すべきと主張。これに対しFortisは2024年10月、詐欺および衡平法上の請求を仲裁から除外し、サンフランシスコ高等裁判所へ提訴した。案件はその後、連邦地裁に移管され、ストラタシスは仲裁終了まで裁判の一時停止を申請。ICDR仲裁の審理は2025年7月に予定されている。
Fortisは、ストラタシスの訴訟の一時停止を認めるべきでないと主張し、弁護士費用と訴訟費用の賠償を求めている。
3Dプリンティング業界での法的紛争
3Dプリンティング業界では、近年訴訟が相次いでいる。ストラタシスも2023年、中国のデスクトップ3Dプリンターメーカー「Bambu Lab」に対し、特許侵害訴訟を提起。X1C、P1S、A1などのモデルが、プリンターヘッドの力検出や加熱プラットフォームなどの特許を侵害していると主張し、販売差し止めと損害賠償を求めている。この訴訟は、オープンソースコミュニティから批判を浴びた。
また、イスラエルの電子機器向け3Dプリンターメーカー「Nano Dimension」は、米金属バインダージェット大手「Desktop Metal」から訴えられている。Nanoが1億8300万ドルでの買収契約において、米外国投資委員会(CFIUS)の承認取得を怠ったとされ、デラウェア州衡平法裁判所に提訴された。
さらにDesktop Metalは、Nanoによる米3Dプリンターメーカー「Markforged」の1億1500万ドルでの買収が契約違反に当たるとして、新たな訴訟を起こした。この訴訟では、2025年2月24日の迅速審理が予定されている。