ウクライナ鉄鋼業、5年間で62億ドルの税納付 – 戦時下で経済を支える柱に

Metinvest

ウクライナの鉄鋼業界は、戦争が続く中でも国家財政を支える重要な役割を果たしている。2024年には、鉄鋼企業の税・手数料の納付額が前年比36%増の324億UAHに達し、過去5年間の累計納付額は1,900億UAH(約62億ドル)となった。

戦時下での納税と産業の現状

戦争が3年目に突入し、国防、社会支援、復興のための財政確保が急務となる中、鉄鋼業界は厳しい状況下でも納税を継続している。政府は税収の安定確保とともに、鉄鋼業の持続可能な発展を促すため、税制の安定や料金規制の予測可能性を確保し、企業支援策を講じる必要がある。

2024年、ウクライナの主要鉄鋼企業の税・手数料の納付額は大幅に増加した。

  • Metinvest:前年比36%増の198億UAH
  • ArcelorMittal Kryvyi Rih:同60%増の66億UAH
  • Interpipe:同27%増の55億UAH

これらの納税額は、国家および地方財政にとって不可欠な収入源となっており、2024年の税納付総額は全体の1.6%を占めた。特に戦時下では、国内税収の多くが国防費に充てられ、社会保障は国際支援に依存している状況だ。

Metinvest CEO ユーリー・リジェンコフ氏のコメント「戦争は企業の責任を一層重くしています。2022年の税収レベルを維持できたことは、業界の適応力と新たな機会を見出す力の証です。Metinvestは最大の納税者の一つであり、引き続き国を支援していきます。」

ウクライナの鉄鋼業界は、戦争による深刻な影響を受けており、2025年はさらに厳しい年になる可能性がある。

  • マリウポリの占領により、2大製鉄所と40%以上の鉄鋼生産を喪失
  • 物流費は戦前の2倍に高騰
  • 戦時リスクのため、外部資金調達が困難
  • 国内コークス用炭鉱(Pokrovsk)が閉鎖し、年間250万トンの輸入が必要に
  • 前線地域の工場は日常的な砲撃にさらされながら操業を継続

Interpipe財務責任者セルギー・クズメンコ氏のコメント「付加価値の高い製品を生産・輸出し続けることで、前線地域の雇用を維持し、国の外貨収入を確保することができます。」

さらに、2022~2023年の主要鉄鋼企業の累積純損失は1,220億UAHに達し、多くの工場が砲撃の危険にさらされながらも地域経済を支えている。

政府の支援と業界の未来

鉄鋼業界は、政府系企業による料金引き上げにも直面しており、その影響額は600億UAH以上に達すると見込まれる。

ArcelorMittal Kryvyi Rihの経営状況

  • 2022年:12億ドルの赤字
  • 2023-24年:年間約1億ドルの赤字
  • 2024年の黒字転換計画は、電力料金上昇と物流費高騰により頓挫

CFO パブロ・ザドロジニー氏のコメント「コスト削減を進めたものの、電力供給の不安定化、高騰する電力・物流費、国際市場の低迷が障害となりました。」

鉄道貨物運賃と電力輸送費のさらなる値上げも予定されており、企業の収益を圧迫する可能性が高い。

ウクライナの鉄鋼業は、輸出市場で他国製品と競争するため、価格転嫁が困難な状況にある。過度な税負担や料金引き上げは競争力を奪い、業界全体の縮小を招く恐れがある。

業界団体ウクルメタルルグプロム(Ukrmetalurgprom)のオレクサンドル・カレンコフ会長は、「最悪のシナリオでは、2025年の鉄鋼生産量が2022年並みに半減する可能性がある」と警鐘を鳴らしている。

鉄鋼企業が操業停止に追い込まれれば、防衛産業向けの原材料や財政収入を失うだけでなく、戦後復興に必要な資源も失われることになる。

結論:政府の支援が不可欠鉄鋼業界は、極めて厳しい環境下でも操業を続け、雇用を守り、国家財政を支えている。しかし、政府が過度な税制や料金引き上げで圧迫すれば、業界全体の存続が危うくなる。

欧州連合(EU)では鉄鋼業への支援策が議論されており、ウクライナも同様の政策を講じるべきだ。

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