トランプ氏、鉄鋼・アルミ関税を発表へ 追加輸入関税も予定

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 ドナルド・トランプ前米大統領は、米国がすべての鉄鋼およびアルミニウム輸入品に対し25%の関税を課す方針を、現地時間12日に発表すると述べた。カナダやメキシコからの輸入品も対象となる見込みで、週内にはさらなる関税措置も講じる予定だ。

 トランプ氏は11日、フロリダ州からルイジアナ州ニューオーリンズへ向かう大統領専用機「エアフォースワン」内で記者団に対し、「米国に入る鉄鋼にはすべて25%の関税がかかる」と語った。アルミニウムについても「アルミニウムも同様だ」と述べ、関税対象に含まれることを示唆した。

 さらに、「報復関税」を導入する考えを明らかにし、「火曜日か水曜日には発表する」と言及。これは、外国が米国製品に課す関税と同等の関税を米国が相手国に課す仕組みだ。「もし彼らが我々に130%の関税を課し、我々が何も課さないのであれば、それが続くことはない」と述べた。

市場の反応と貿易摩擦の懸念

 トランプ氏の関税発言は、貿易政策における強硬姿勢を改めて示すものだ。関税の導入は前回政権時の4年間よりも早い段階で実施される。前回は法人税減税や規制緩和を優先したが、今回は貿易政策を通じた財政赤字削減や移民対策の交渉手段として関税を利用する考えを示している。

 今回の鉄鋼・アルミ関税および報復関税の詳細については言及しなかったものの、トランプ氏は以前、カナダとメキシコからの全輸入品に25%の関税を課すと警告したことがある。ただし、先週には30日間の猶予措置を発表していた。一方で、中国からの輸入品には10%の追加関税をすでに適用している。

 トランプ氏の関税方針は、世界の貿易関係者に即座に懸念を引き起こした。韓国の崔相穆(チェ・サンモク)経済副総理兼企画財政相は12日、関税の影響を分析するために外交・貿易当局と緊急会合を開いた。韓国は昨年1~11月に約48億ドル(約7000億円)相当の鉄鋼を米国に輸出しており、韓国鉄鋼輸出全体の14%を占める。この発表を受け、ポスコや現代製鉄など韓国大手鉄鋼メーカーの株価は取引開始直後に下落した。

 金融市場も影響を受けた。9日にトランプ氏が報復関税の方針を示したことで、米国株式市場は下落。消費者心理指数の低下も相まって、ダウ工業株30種平均は0.99%、ナスダック総合指数は1.36%それぞれ下落した。一方、欧州ではSTOXX 600指数が0.22%上昇し、ドイツDAX指数も0.30%上昇した。

金市場の動向と鉄鋼業界への影響

 市場の不安定さを受け、安全資産とされる金の需要が急増。12日朝、金価格は1.20%上昇し、1オンス当たり2893ドル(約42万3000円)と過去最高値を更新した。米ドル指数も108.3まで上昇した。

 市場関係者の間では、関税のインフレ圧力が米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ余地を狭める可能性があるとの見方が広がっている。IG証券は「関税がインフレ要因と捉えられるため、FRBの利下げ政策が制約を受ける恐れがある。さらに、中国の報復関税発動や欧州連合(EU)の対抗措置により、貿易戦争の激化が懸念される」と指摘した。

 鉄鋼・アルミ関税が発動されれば、米国の金属産業への影響は避けられない。鉄鋼の主要貿易相手国であるカナダとメキシコは、報復措置を講じる可能性が高く、世界的な貿易摩擦の激化が懸念されている。

 カナダ・オンタリオ州のダグ・フォード州首相は、X(旧ツイッター)で「この4年間は混乱と不安定の連続だった。我々の経済を守るため、安定した政策を維持する必要がある」と投稿。トランプ氏の関税政策に対し、長期的な対抗策を求める姿勢を示した。

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