コバルト中間製品価格、支持線割れの可能性

 コバルト

コスト支援の低下と需要不振が課題、中国市場の先行きに不透明感

中国のコバルト塩(硫酸コバルトおよび塩化コバルト)市場は、コスト支援の弱体化と低迷する需要により、引き続き厳しい状況が続く見通しだ。ただし、最終市場の動向にはサプライズがある可能性も指摘されている。一方、コンゴ民主共和国(DRC)におけるコバルト原料供給は安定的に推移する見込みだ。

コスト動向

DRCのコバルト生産量は2024年に上限に達したものの、現地の鉱山企業(グレンコアなど)は、2025年も生産を維持する見通しだ。この動向は、2025年初めに予想された生産減少の見通しとは異なる。また、DRCとルワンダの紛争は現在のところコバルト原料の輸出には影響を及ぼしていないが、市場関係者は政治環境を慎重に見守っている。

こうした状況下で、コバルト塩メーカーは、原料供給が潤沢であることや採算性の低迷を背景に、積極的な原料在庫の積み増しには動いていない。最近の調査では、中国および欧州市場における取引は低調であり、標準グレードのコバルトは9.5米ドル/ポンドで取引されている。

コバルト塩メーカーは、コバルト中間製品の価格を5.5米ドル/ポンド以下まで引き下げることで収益確保を目指しているが、売り手側は早期の値下げには応じず、5.6米ドル/ポンドを維持している。このため、今後も両者の綱引きが激化すると予想される。

Mysteelの試算によると、コバルト中間製品価格5.6米ドル/ポンドを基準とした場合、硫酸コバルトと塩化コバルトのコストは、それぞれ28,000元/トン、26,775元/トンとなる。一方、硫酸コバルトと塩化コバルトのスポット価格はそれぞれ26,000~26,500元/トン、31,000~32,000元/トンで推移しており、硫酸コバルトメーカーは依然として赤字を抱え、塩化コバルトメーカーは辛うじて収支が均衡する状況となっている。

需要動向

需要面では、三元前駆体の需要低迷が継続しており、その要因として電気自動車市場の成長鈍化が挙げられる。加えて、低コバルト・コバルトフリー技術への移行が進み、コバルトへの依存度が低下している。特に、高ニッケル三元電池やリン酸鉄リチウム(LFP)電池が市場シェアを拡大しており、政府の買い替え支援策による需要喚起があるものの、LCO市場では顕著な需要増加は見られない。

硫酸コバルトの収益悪化を受け、一部の中小メーカーは減産や生産停止に追い込まれている。

2025年1月、中国の硫酸コバルト生産量は19,973トンとなり、前月比0.19%減、前年同月比では27.53%減少した。また、塩化コバルトの生産量は17,377トンで、前月比12.91%減だったが、前年同月比では14.63%増加している。

総括

2025年のコバルト化学品市場は、DRCの生産継続による供給圧力と需要低迷によって引き続き弱含みの展開が予想される。

コバルト中間製品価格が下限ラインを維持すれば、硫酸コバルトと塩化コバルトの価格に一定の下支えが期待できるが、需要の低迷が続く中で価格は下落圧力を受けやすく、上流と下流のプレイヤー間の交渉は一層激化するとみられる。

また、DRCのコバルト原料供給は政治的不透明感があるものの、当面は安定が続く見通しだ。一方で、需要の成長余地が乏しいことから、特に中小メーカーの市場撤退が進む可能性がある。技術革新とコスト管理が生き残りの鍵となる中、市場構造を変える要因として、リサイクルシステムの動向にも注目が集まる。

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