中国の炭素市場、買い手と売り手の対立で初の取引ゼロを記録

ETS

2025年1月14日と16日、中国の全国排出権取引市場(National ETS)が2021年の発足以来初めて「取引ゼロ」を記録した。これは、排出枠(CEA)の需給バランスを巡る買い手と売り手の対立によるものとみられる。特に、2024年中盤以降の政策変更が、市場の価格動向に関する期待のズレを引き起こしている。


売り手の強気姿勢を支える要因

売り手側は、排出枠価格(CEA価格)の上昇を見込み、高値での販売を狙っている。主な理由は以下の2点である。

短縮されたコンプライアンス期間

  1. 2023年までの2年サイクルから1年サイクルに移行したことで、取引頻度が増加。2024年のCEA流動率は3.7%と、過去の2~3%を上回った。この変更により、企業は毎年の排出枠調達を迫られ、市場の流動性が向上した。
  2. 排出枠供給の引き締め

2024年4月、生態環境省(MEE)がCEA配分計画の意見募集を実施。これにより、

  • 排出枠の削減傾向
  • 有償配分の導入
  • ETS対象業種の拡大

などが市場で期待され、CEA価格を押し上げた。2024年4月24日には、公開入札市場でのCEA価格が101.05元/トンと過去最高値を記録し、初めて100元の大台を突破した。


買い手の慎重姿勢と価格抑制要因

一方で、2025年の排出枠繰越(キャリーオーバー)ルールの改定と新規業種の排出枠緩和措置が、買い手の慎重姿勢を強めている。

キャリーオーバー制限の強化

  • 1万トン以上の余剰排出枠を持つ企業は、一部を売却しなければならない規則が導入され、市場供給量が増加する可能性がある。
  • 新規業種への柔軟な配分 ETSに新たに加わる業種には比較的寛容な排出枠が割り当てられるため、市場供給の増加が予測される。

2025年の市場価格予測

市場関係者のコンセンサスでは、2025年のCEA価格は100元/トン前後(2024年の96元/トンから約4%上昇)と見込まれる。ただし、コンプライアンス期限が近づくにつれ120~130元/トンに上昇する可能性が高い。

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