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コバルト |
コバルト市場は過去にもブームとバスト(急成長と暴落)を繰り返してきたが、今回の下落は前例のないものであり、いつまで続くかは誰にも分からない状況だ。
コバルト価格の暴落と中国CMOCの影響
ロンドン金属取引所(LME)におけるコバルト価格は、2022年4月の1トンあたり8万2,000ドルの高値から、現在は2万1,550ドルへと下落し、2010年の契約開始以来の最低水準を記録している。
今回の供給過剰の原因は、世界最大のコバルト生産国であるコンゴ民主共和国(DRC)における生産増加だ。しかし、2018~2019年の暴落時に問題となった小規模採掘(アーティザナル・マイニング)とは異なり、今回は中国のCMOCグループが主因となっている。
同社は2023年にコバルト生産量を前年の2倍以上に増やし、約6万トンの追加供給を市場に投入。これにより、年間生産量約20万トンの市場が飽和状態に陥った。2024年には10万~12万トンの生産を計画しており、供給過剰の状況は続く見通しだ。
銅副産物としてのコバルト供給増加
CMOCはもともと中国モリブデン(China Molybdenum Corp)として知られていたが、コンゴの二大銅鉱山「TFM(Tenke Fungurume)」と「KFM(Kisanfu)」の開発により、世界最大のコバルト生産企業へと成長した。
2023年にはコンゴの鉱山から65万トンの銅を生産しており、銅価格の高騰に伴いさらなる生産拡大が見込まれている。コバルトの98%は銅またはニッケルの副産物として生産されるため、銅の増産がそのままコバルトの供給過剰を加速させる構造だ。
さらに、インドネシアのニッケル生産量が急増していることも、コバルト市場の供給過剰に拍車をかけている。現在、インドネシアは世界第2位のコバルト生産国となり、今後も生産拡大が続く見通しだ。
EV市場の変化とコバルト需要の鈍化
コバルトの需要は電気自動車(EV)用電池によって大きく変化しているが、ここ数年の見通しは以前ほど明るくない。
中国市場では、EV販売がハイブリッド車へとシフトし、電池の小型化が進行中。また、リチウム鉄リン酸塩(LFP)電池の普及が進み、コバルトを使用しないバッテリー技術への転換が加速している。
欧米市場では、ニッケル・コバルト・マンガン(NCM)系電池が依然主流だが、2023年のEV販売台数は北米で9%増と限定的であり、欧州では市場が縮小した。コバルトの使用量は横ばいで、コスト削減やコンゴにおける倫理的問題を理由に、低コバルト電池への移行が進んでいる。
西側諸国のコバルト確保の課題
コバルトは弾薬や戦闘機用高温合金など軍事用途でも不可欠なため、米国や欧州連合(EU)は中国依存のリスクを懸念し、独自の供給網確立を目指している。
しかし、価格の低迷により西側諸国での採掘プロジェクトは頓挫。米国防総省の支援を受けてアイダホ州で鉱山開発を進めていたJervois Miningは2024年1月に操業停止を発表し、破産手続きを進めている。
西側諸国が自前のコバルト供給網を確立するには、現行の市場メカニズムとは異なる価格形成手段が必要となるが、市場の需給動向を見る限り、短期的な価格回復は期待できない状況だ。
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