レアアースMMI:10%の中国関税、その影響はどこまで?

レアアース

レアアースMMI(月次金属指数)は1月から2月にかけて横ばいで推移し、わずか2.88%の上昇にとどまった。過去1年間でレアアース価格は、鉄鋼など他の金属製品よりも大きく変動しており、2025年にはさらなる市場の変動が予想される。
トランプ前大統領は最近、中国からの全輸入品に対して10%の関税を課した。これにはレアアースも含まれる。一方、ミャンマーではカチン独立軍(KIA)が貴重なレアアース鉱山の広範な支配権を維持し、同国政府の管理能力を大きく制限している。
この関税措置は、世界のレアアース市場にどのような影響を及ぼすのか。現在、中国は世界のレアアース需要の85~95%を供給しており、その市場支配力は非常に強い。ロイターによると、中国政府は米国の関税措置に対抗し、レアアースを含む重要鉱物の輸出規制を発表。これにより、中国がこの分野での優位性を外交的な武器として活用する姿勢が明確になった。
関税の導入は、サプライチェーンの混乱やコスト増大を招くとの懸念を引き起こしている。電子機器、自動車、防衛産業など、レアアースを必要とする業界では、調達の難航が予想される。ロイターは、これにより生産の遅延や最終製品価格の上昇につながる可能性があると報じている。
一方、一部のアナリストは、この懸念が過剰ではないかと指摘する。過去の貿易摩擦時にも、企業は供給網の多様化や代替資源の開発を進め、危機を乗り越えてきた。さらに、中国の輸出規制は部分的なものであり、交渉の余地が残されていることから、全面的な供給停止の可能性は低いとの見方もある。
企業は関税や供給不足の影響を抑えるために、いくつかの戦略を活用できる。第一に、複数の供給源を確保し、一国への依存度を下げることが有効である。また、オーストラリアなどの地域で新たなレアアース鉱床の開発を進めることも、長期的な解決策となる。さらに、リサイクル技術の推進により、既存製品からレアアースを回収し、一次資源への依存を減らすことも重要だ。
一方、ミャンマーのレアアース鉱山では、武装勢力の影響で混乱が続いている。特にカチン独立軍(KIA)は、カチン州の主要鉱山(パンワ、チップウェなど)を掌握しており、同地域のレアアース酸化物の重要供給源である中国への輸出が大幅に制限されている。
従来、これらの鉱山はミャンマー政府と関係の深い新民主カチン軍(NDA-K)が管理していた。しかし、KIAの攻勢により状況は一変した。アナリストによれば、KIAはレアアース採掘を再開する意向を示しているものの、中国との交渉が難航すれば、供給の正常化には時間を要する可能性がある。
今後の見通しとして、KIAの支配が続く限り、世界のレアアース供給網は不安定な状況が続くと見られる。KIAと中国企業との交渉が妥結すれば採掘再開の可能性はあるが、具体的なスケジュールは不透明だ。さらに、今後も地域紛争が激化する可能性も否定できない。

レアアースMMI:注目すべき価格変動

MetalMinerのMMIレポートによると、以下のような価格変動が観測された。
  • ユウロピウム酸化物:4.91%下落し、1キログラムあたり23.77ドル
  • セリウム酸化物:7.39%上昇し、1メートルトンあたり1,122.89ドル
  • ジスプロシウム酸化物:5.11%上昇し、1キログラムあたり227.46ドル
  • ネオジム:4.59%上昇し、1メートルトンあたり69,941.78ドル

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