![]() |
National Manufacturing Institute Scotland |
英国の3DプリンターメーカーRapid Fusion社が、国内初の大型ハイブリッド3Dプリンター「Medusa(メデューサ)」を2月26日に発表する。同社のSkypark R&D施設で開催される発表イベントでは、実機デモンストレーションや業界関係者による講演も予定されている。
国内開発による製造業の強化
Rapid Fusionは、2024年に発売した「Apollo 3Dプリンター」に続き、英国初の大判ハイブリッド3Dプリンターを開発した。「Medusa」は、英国製造業のリショアリング(国内回帰)を推進するため、国内で開発・製造されたシステムであり、海外製品に依存する現状を変革することを目指している。
同社は、英国政府のイノベーション支援機関「Innovate UK」から120万ポンド(約2.3億円)の助成金を受け、「Medusa」を開発。ペレット押出、フィラメント、CNC加工を統合した単一ソースの製造ソリューションとして、大型の金型やツール製造に特化している。
航空宇宙、自動車、海洋、建設などの分野での活用が期待されており、ロールス・ロイス、3Dプリントソフトウェア開発のAi Build、スコットランド国立製造技術研究所(NMIS)などが開発に協力した。NMISのデジタルファクトリー部門でアディティブ・マニュファクチャリング(AM)を担当するサンパン・セス氏は、「産業界と学術界の協力により、優れた成果が生まれた」と述べている。
高速・高精度のハイブリッドシステム
「Medusa」は、従来の3Dプリンターの3倍の速度(最大1,200mm/秒)と2倍の精度を誇る。また、トレーニングとメンテナンスのコストを30%削減できる設計となっている。
AI(人工知能)による予測保守、熱モデリング、コンピュータービジョン機能を搭載し、効率性を大幅に向上。大規模製造向けの競争力のある選択肢として市場投入される。
価格は50万ポンド(約9,200万円)で、販売初年度の売上は最大500万ポンド(約9.2億円)に達する見込み。自動車や航空宇宙業界のTier 1サプライヤーからの関心も高まっており、市場投入前から注目を集めている。
Rapid Fusionのジェイク・ハンドCEOは、「英国の大判AM市場は長年にわたり遅れをとっていた。パンデミック中にサプライチェーンが脆弱であることが露呈し、国内生産の必要性が明確になった」と指摘。「Medusa」は、国内製造の強化だけでなく、製造コスト削減やリードタイム短縮、CO2排出削減にも寄与するとしている。
世界のハイブリッド3Dプリンター市場の動向
3Dプリンティング業界では、ハイブリッドシステムの導入が進んでいる。2023年のFormnextでは、米国のAdditec社が「Hybrid 3」を発表。同機は、液体金属ジェット(LMJ)、レーザー指向性エネルギー堆積(LDED)、CNC加工を統合し、鉄・ニッケル・アルミニウム・銅合金に対応する。
また、杉野機械(Sugino Machine)は「XtenDED」を開発。CNC加工とレーザー金属堆積(LMD)を融合させ、ニッケル・コバルト系超合金やステンレス鋼の精密加工を可能にした。特に耐熱性が求められる航空宇宙用途に適しており、従来の製造技術と比べて精度・生産性・材料効率を向上させた。
Rapid Fusionの「Medusa」は、こうした世界的な潮流の中で、英国初の本格的なハイブリッド3Dプリンターとして注目されている。国内製造業の強化と持続可能な製造ソリューションの実現に向け、今後の動向が期待される。