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Hyundai |
電炉(EAF)技術を採用し、サプライチェーン強化
韓国の財閥企業である現代(Hyundai)は、米国での製造拠点拡大の一環として新たな製鉄所を建設する計画を発表した。この発表は、現代の鄭義宣(チョン・ウィソン)会長がドナルド・トランプ前大統領、ルイジアナ州知事ジェフ・ランドリーとともにホワイトハウスで行ったものだ。投資額は総額21億ドルに及び、この中には米国産液化天然ガス(LNG)の30億ドル分の購入も含まれる。現代は以前から、建設予定の製鉄所に電炉(EAF)技術を採用する可能性を示唆していた。電炉は主にリサイクル鋼材を使用するため、環境負荷の軽減が期待される。また、同社の発表によれば、天然ガスを用いた直接還元鉄(DRI)の活用も視野に入れており、鉄スクラップの補完材料として活用される可能性がある。
DRIの活用と環境面での影響
電炉で使用されるDRIやホットブリケットアイアン(HBI)は、従来の鉄スクラップと異なり、鉄純度の調整が容易である。そのため、高品質な鋼材を生産するための重要な原料となっている。米国内でもDRIの活用は進んでおり、ノースカロライナ州シャーロットに本拠を置くニューコア(Nucor Corp.)は、DRI製造に積極的に投資している。しかし、DRIの経済性には課題もある。天然ガス価格の変動に左右されやすく、コスト競争力が安定しない点が指摘されている。ニューコアも過去20年の財務報告の中で、DRIの採算性が時期によって異なることを認めている。一方、環境面では、ワシントンに本拠を置くNGO団体「Mighty Earth」が、現代の鉄鋼事業に関する報告書『Tainted Steel: The Deadly Consequences of Hyundai’s Dirty Steel Supply Chain』を発表し、同社が石炭由来の高炉(BF-BOF)製鉄を継続している点を批判している。この報告書では、ロシア産石炭を使用した鉄鋼の供給チェーンが指摘されており、環境負荷の観点から問題視されている。
米国内製鉄所の建設がもたらす影響
現代が米国内で電炉を導入し、DRIを活用することで、同社の石炭依存度が低減する可能性がある。この動きは、米国の鉄スクラップ業者やリショアリング(製造業の国内回帰)を推進する勢力にとっても歓迎すべきニュースとなるだろう。バイデン政権の貿易政策や環境規制の影響を考慮しながら、現代は米国市場への投資を拡大している。2025年初頭には、現代自動車(Hyundai Motor Co.)のホセ・ムニョス社長が「米国での投資決定は、トランプ前政権時代に行われた」と述べ、現政権との対話を継続していることを強調している。現代の電炉製鉄所が本格的に稼働すれば、米国の鉄鋼業界や自動車産業にも大きな影響を与えることが予想される。環境負荷の低減とサプライチェーンの安定化を両立させるため、今後の動向が注目される。
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STEEL