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カナダ,米国, メキシコ |
カナダ・メキシコ産鉄鋼に高関税発動
米国政府は3月4日より、カナダおよびメキシコからの鉄鋼輸入に対し25%の関税を適用した。カナダとメキシコはそれぞれ米国にとって最大および第3位の鉄鋼輸出国であり、この措置は北米鉄鋼市場に大きな影響を与えると予測されている。
ドナルド・トランプ大統領は1月20日にこの関税措置を発表し、当初は2月4日に施行予定だった。しかし、両国の国境措置の譲歩を受けて1カ月延期された経緯がある。これに加えて、中国からの輸入品には2月4日から10%の追加関税が適用されている。
今回の関税発動により、米国の株式市場は即座に反応し、3月3日のS&P 500指数は年初来最悪の下落率となる1.8%安で取引を終えた。米国内の鉄鋼価格やサプライチェーンへの影響は避けられない状況だ。
供給の逼迫と価格上昇の懸念
米国鉄鋼協会(AISI)によると、米国の鉄鋼消費量の23%を輸入が占めており、2024年にはカナダとメキシコからの輸入が8.6%に達していた。特にカナダは最大の鉄鋼輸出国であり、同年には約600万トンの鉄鋼を米国に輸出。主な製品は鋼板(ホットディップ亜鉛めっき鋼板・冷延鋼板)やワイヤーロッド(線材)である。
ホットロール鋼板や厚板、ワイヤーロッドの供給は特に懸念される分野だ。2024年には、米国がカナダから輸入したホットロール鋼板は91万トン、連続圧延厚板は60.4万トンで、これらの製品はそれぞれ国内総輸入量の48%、60%を占めていた。米国内では新たな生産能力の追加が行われているものの、短期的な供給不足は避けられないとみられる。
また、ワイヤーロッドの輸入も大きな影響を受ける。2024年にはカナダから45万トンが輸入され、米国の総輸入量の46%を占めた。リバティ・スチールのサウスカロライナおよびイリノイの工場閉鎖により、国内生産は減少しており、供給不足がさらに深刻化する可能性が高い。
鉄鋼価格の上昇傾向
米国の鉄鋼価格はすでに上昇しており、MEPSインターナショナルによると、2025年に入ってからホットロールコイル、厚板、ワイヤーロッドの価格が大幅に上昇した。Nucorは1月中旬以降、厚板価格を1ショートトン当たり260ドル、ホットロールコイルを110ドル、ワイヤーロッドを100ドル引き上げた。MEPSのレポートでは、ホットロールコイル価格が15.4%、厚板が12.5%、ワイヤーロッドが11.5%上昇しており、今後もさらなる値上げが予想される。
今後の見通しとリスク
今回の関税措置により、米国の鉄鋼市場はさらなる供給制約と価格上昇に直面する可能性が高い。加えて、3月12日には「セクション232」に基づく鉄鋼およびアルミニウムの追加関税(25%)が再導入される予定で、2018年以来適用されていた免除措置がすべて撤廃される見込みだ。
さらに、カナダとメキシコは4月2日から報復関税を発動する予定であり、米国の鉄鋼市場の混乱は長期化する恐れがある。トランプ大統領は、今後の関税措置について「すべての関税は累積される」と述べており、輸入コストのさらなる上昇と供給不足の深刻化が懸念されている。