コイルコーティング:進化する塗装コイル業界

コイルコーティング

コイルへの塗装やコーティングの適用は約100年にわたって行われてきたが、この業界は現在も進化を続けている。近年、供給網の変化、品質管理の強化、新技術の進展が、コイルコーティングの未来を形作っている。


供給網の変化と市場動向

コイルコーティングの供給網は近年、大きな変化を遂げている。GFG Peabody社の社長兼CEOであるケビン・ブキャナン氏は、「COVID-19の影響で一時的に混乱したが、業界はほぼ回復した」と語る。「米国では新たな生産能力が続々と稼働し、ポストペイント(後塗装)からプリペイント(事前塗装)への移行が進んでおり、塗装コイルの需要が高まっている」と指摘する。

ベッカーズ社のアメリカ地域技術ディレクターであるポーリン・マイヨ氏は、供給網の強化策について「原材料の種類を減らし、サプライヤーとの関係を強化することで、供給の安定化を図っている」と述べる。「安全在庫を増やすことで、材料不足のリスクを抑えつつ、サービスの質を維持している」と付け加える。

市場の統合も業界の構造に大きな影響を与えている。VORTEQ Coil Finishers社のCEOであるジム・ドッキー氏によると、大手企業であるSDI、ニューコア、Precoatなどが生産能力を拡大する一方で、買収も相次いでいる。「ブルースコープ社がMetal Coatersを買収したことも、市場に大きな変化をもたらした。VORTEQも過去8年間で6件の買収を行い、独立系のコイルコーティング事業を自社ブランドに統合してきた」と語る。

また、原材料費、労働コスト、エネルギー価格などの経済要因も、コイルコーティング業界に影響を及ぼしている。マイヨ氏は「塗料のコストは最終製品価格への影響は小さいが、基材の選択、厚み、顔料の種類などがコストを左右する」と述べる。GLOBUS社の営業ディレクターであるディエゴ・ペデモンテ氏は、「塗料とエネルギーが主要なコスト要因であり、特に低生産能力のラインでは労働コストの影響が大きい」と指摘する。

コイルコーティング製品の用途としては、建築・建設業界が全体の60%以上を占める。ドッキー氏は「金属屋根の需要が拡大しており、Metal Roofing AllianceやMetal Construction Associationなどの業界団体が成長を後押ししている」と話す。アクゾノーベル社のマーケティングマネージャーであるアマンダ・パターライン氏は「家電製品、HVACシステム、ガレージドアなどの用途でも広く活用されている」と述べる。


品質管理と新技術の進展

コイルコーティングの品質維持には、高度な技術とオートメーションが不可欠だ。パターライン氏は、「プライマーやトップコートの保証が耐食性を確保する上で重要」と述べる。「適切な基材の選択と、適正な前処理・施工プロセスの遵守が、環境要因による劣化を防ぐ」と指摘する。

ペデモンテ氏は、自動化が品質の安定性を向上させる鍵だと考えている。「当社はロールコーター向けにオートメーションパッケージを開発し、高精度なコーティングを実現している。塗膜厚の自動制御により、リアルタイムで塗布量を調整し、バラツキを低減できる」と説明する。

新技術の進展もコイルコーティングの未来を形作る重要な要素だ。ブキャナン氏は、「センサー技術がコーティング工程の最適化に重要な役割を果たす」と述べる。「リアルタイムのフィードバックにより塗布量を自動調整することで、効率を向上させ、廃棄物を削減できる」と指摘する。

また、UV/EBコーティング技術も業界の新たな潮流となっている。マイヨ氏は「溶剤を使用しないため、環境負荷が低く、設備スペースも小さくて済む」と説明する。アクゾノーベル社は、中国のWuxi EL PONT Radiation Technology社と提携し、E-Beam(電子線)技術を開発。これにより、エネルギー消費の低減、より高速な生産、環境負荷の軽減を実現している。

さらに、デジタル印刷技術の発展により、金属コイルに高精細な画像を直接印刷することが可能になった。ペデモンテ氏は、「溶剤を使用しないコイルコーティング技術への移行が進むと予想される。従来の熱硬化方式を廃止すれば、CO2排出量の大幅な削減が可能になる」と述べる。

ドッキー氏は、今後のエネルギー効率向上への取り組みを強調する。「コーティングプロセスでは大量の電力を使用し、塗料乾燥には天然ガスを燃焼する。そのため、将来的には乾燥炉や酸化装置、コーティング処方の最適化により、エネルギー消費の削減を目指す」と話す。

規制の変化も業界に影響を与えている。マクメナミン氏は、「現在、多くのコイルコーターが耐食性向上のために6価クロムを使用しているが、環境規制の強化により、3価クロムや非クロム技術への移行が求められている」と指摘する。「最大の課題は、同等の性能を持つ代替技術を競争力のあるコストで実現することだ」と述べる。

コイルコーティング業界は今後も進化を続け、オートメーション、持続可能性、規制適合がさらなる発展の鍵となるだろう。


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