ウクライナのレアアース資源を巡る米露の駆け引き

希土類


米国・ウクライナ間のレアアース取引が進展

レアアースの供給網は、中国が主導する形で極端に偏った状態が続いている。しかし、米国とウクライナ、さらにはロシアの動向がこの構図を変える可能性が浮上している。

現在、米国はウクライナ政府とレアアース採掘・供給に関する交渉を進めており、ドナルド・トランプ前大統領は「米国が提供した軍事支援の見返り」と位置付けている。米国の支援額についてはトランプ氏が3,500億~5,000億ドルと主張する一方で、ウクライナ側は1,000億ドル程度としており、双方で大きな隔たりがあるものの、レアアース交渉の焦点となっている。


ロシアの対抗策とウクライナの資源状況

一方、ロシアは突然、米国に対して「ウクライナ国内でロシア軍が掌握したレアアース鉱床の権益提供」を打診した。ロシアのプーチン大統領は、経済協力の一環として米国との共同開発も示唆している。

ロシアは現在、ウクライナ東部ドンバス地域とクリミアを含む約20%の領土を掌握しており、同地域にはウクライナのレアアース埋蔵量の約50%が存在するとされる。CBSの報道によれば、戦争研究所(Institute for the Study of War)が提供したデータによると、ウクライナのレアアース総埋蔵量は世界の約5%に相当するとみられている。


世界的な供給網への影響

ウクライナ間の交渉がまとまれば、米国はレアアース確保において新たな選択肢を得ることになる。これに対し、中国は現在、世界のレアアース生産の約69%を担っており、世界最大の加工能力も有している。これが米国の供給網を不安定にする要因となっており、米国は中国依存からの脱却を急いでいる。

ただし、ウクライナは現在レアアースの商業生産を行っておらず、ロシア支配下の地域を含めた開発の困難さも指摘されている。そのため、米国がウクライナの資源開発を進めるには長期的な投資と技術導入が不可欠となる。


米国の戦略とレアアース供給の未来

米国は中国への依存を減らすため、レアアースの調達先を多角化する方針を進めている。ウクライナやロシアとの交渉もその一環といえる。さらに、トランプ前大統領が大統領就任時にグリーンランドの購入を提案したのも、同地に豊富なレアアース資源があるためだ。

米国の動きが成功すれば、レアアース供給網の分散化が進み、中国の支配力が低下する可能性がある。今後の米ウクライナ交渉の行方と、ロシアが米国の提案を受け入れるかどうかが、世界のレアアース市場に大きな影響を及ぼすことは間違いない。

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