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コバルト |
価格高騰と供給の不均衡
2025年2月24日、世界最大のコバルト供給国であるコンゴ民主共和国(DRコンゴ)が、国際市場での供給過剰による価格下落に対応するため、4か月間のコバルト輸出停止を発表した。この政策は2月22日から施行され、3か月後に影響を評価し、必要に応じて調整される予定だ。
発表後、コバルト市場は活況を呈し、SMM価格によると、3月14日までにコバルト硫酸塩、塩化コバルト、中間製品の価格が累計80%以上上昇している。
コバルト資源の圧倒的シェアが最大の要因だ。米国地質調査所(USGS)によると、DRコンゴは世界のコバルト埋蔵量で首位に立ち、次いでオーストラリア、インドネシアが続く。2024年の世界コバルト生産量の73%をDRコンゴが占め、インドネシアは13%で2位だったが、その差は依然として大きい。
このため、DRコンゴの輸出停止はグローバル市場に直接的な影響を及ぼし、供給不安による価格高騰を引き起こした。
スポット市場への影響と今後の焦点
今回の措置により、スポット市場の需給見通しが変化した。年間18万トンの生産量のうち、4か月間の輸出停止で約6万トンの供給が市場から一時的に消失する見込みだ。
短期的には供給逼迫感が強まり、価格上昇を招く可能性が高いが、中長期的には今後の政策次第となる。以下のポイントが注目される。
- 在庫の偏在:2023年~2025年の間に精製コバルトの在庫は大幅に増加した一方で、コバルト硫酸塩や酸化コバルトは在庫減少または均衡状態にある。製品ごとの需給バランスの違いが、価格に異なる影響を与える可能性がある。
- 長期契約比率の低さ:過去の価格低下を背景に、コバルト製品の長期契約締結率が低下していた。これによりスポット取引の比率が高く、価格変動が増幅されやすい状況となっている。
- コバルト原料の供給と需要のミスマッチ:統合型の大手企業はMHP(混合水酸化沈殿物)やリサイクルなど複数のルートで原料を確保しているが、非統合型メーカーは外部調達依存度が高いため、高価格の原料を受け入れざるを得ない。これがコバルト製品の価格を押し上げる要因となる。
- インドネシアのMHP供給増加:インドネシアでは、2024年にMHPから約3.5万トンのコバルトを生産しており、2025年には約5万トンに増加する見込み。これが一定の供給補完となるが、市場全体の需給調整にどこまで影響を及ぼせるかは未知数だ。
今週のコバルト製品市場動向
- コバルト中間製品:供給が限定的となり、メーカーは在庫確保と販売抑制の姿勢を強めている。需要家の在庫補充も活発化し、価格が急騰した。
- コバルト塩:輸出禁止発表後、メーカーの販売抑制姿勢が強まり、スポット価格が80%近く上昇。
- 精製コバルト:供給は比較的安定しているものの、売り渋りの動きが強まり、価格が上昇傾向。
- 酸化コバルト(Co₃O₄):メーカーの供給停止や在庫積み増しにより、流通在庫が極端に減少。スポット市場で高値取引が相次ぎ、価格上昇が続く見通し。
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