英国国防省、初の先進製造戦略を発表—中心はアディティブ・マニュファクチャリング

英国国防省

供給網強化と迅速な部品調達を目指す

英国国防省(MOD)は、アディティブ・マニュファクチャリング(AM、積層造形)を中心とした初の先進製造戦略を発表した。この戦略は、供給網の強化、部品調達の迅速化、老朽化した装備の維持を目的とする。戦略は三本柱で構成される。産業界への投資促進、政策・財務・商業的な障壁の克服、供給網へのAM導入のためのネットワーク構築だ。近年のロシアのウクライナ侵攻や中東情勢の悪化により、国防分野では供給網の柔軟性向上が急務となっており、さらに軍隊や装備の縮小が供給課題を深刻化させている。

MODは2022年にAM導入の方針を掲げ、「供給網の強靭化と装備の即応性向上」を目的とした4つの柱を提示していた。①AM専用の部品設計・リバースエンジニアリング、②デジタルデータを活用した製造プロセス、③国際基準を満たす生産能力の確立、④必要な現場での部品製造を可能にする移動式生産能力だ。国防兵站・支援部門の責任者であるアンディ・カイト副提督は、「AMの活用は極めて有望であり、供給網の効率向上と作戦即応性の強化につながる」と述べた。

15%の装備品をAM化で1億1000万ポンドのコスト削減

MODの戦略文書では、AMの主な目的として装備品の供給不足解消と陳腐化対策が挙げられている。2021年の報告では「部品の陳腐化」が供給上の最大の問題とされており、現在MODの装備品は130万点以上に及ぶが、そのうちの15%をAMで製造すれば今後15年間で1億1000万ポンド(約210億円)のコスト削減が可能になると試算されている。MODは現在、Project TAMPAなどのAM導入プロジェクトを推進中であり、潜水艦支援プログラム(ISS)にもAM技術が活用されている。しかし、成功には「市場との迅速な連携」と「適切な契約・プロセスの整備」が不可欠とされている。

戦略文書では、AM導入の課題として部品品質の一貫性、標準化、ライフサイクル管理、トレーニング不足が指摘されている。これに対し、教育プログラムの充実、設備供給の標準化、戦略的パートナーシップ構築が解決策として提案されている。さらに、AM部品は従来の部品と単純比較すると高価に見えるが、可用性損失コストを考慮すると経済的メリットがあるとして、コスト評価の見直しを促している。MODは、国際的なパートナーと協力しつつ、AMを国防分野に本格導入することで、供給網のレジリエンス向上と即応性強化を実現する方針だ。

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