英国政府、最後の粗鋼メーカー救済へ動く

British Steel

ブリティッシュ・スチール、暫定CEOとCCOを任命

炉の稼働継続に向け原料確保を最優先に

英国の粗鋼製造の最後の砦であるブリティッシュ・スチール(British Steel)は4月14日、同社のスカンソープ製鉄所における「一貫性と専門性を持ったリーダーシップ」を確保するため、アラン・ベル氏を暫定CEOに、リサ・コールソン氏を暫定CCOに任命したと発表した。両氏はそれぞれ14年、19年間にわたり同社で要職を歴任してきた人物である。

この人事発表に先立ち、英国政府は緊急会議を開き、同国唯一の粗鋼メーカーを閉鎖から救済する法案「スチール・ビル(Steel Bill)」を可決。これにより政府は同社の事実上の管理下に入り、操業継続への道が開かれた。

ベル暫定CEOは「高炉の操業継続に不可欠な鉄鉱石と原料炭の確保、そして安全な職場環境の維持が当面の最優先事項だ」と強調。UKスチール協会のギャレス・ステイス事務局長も「炉が冷えると再稼働は不可能に近い。原料確保のために企業や政府が一致団結している」と述べた。

今回の動きは、中国・敬業集団(Jingye)傘下で経営再建中のブリティッシュ・スチールが、1日あたり70万ポンド(約1.3億円)の損失を抱えている現状に対処するものだ。Jingyeは同社を高炉から電炉へ転換するために約10億ポンドの支援を政府に要請していた。

スカンソープの製鉄所は、英国内唯一の粗鋼生産拠点であり、ポート・タルボット(Tata Steel)での高炉閉鎖後、国内鉄鋼供給の要となっている。英国内の鉄道レールの最大95%を供給するほか、線材や形鋼、特殊プロファイル鋼などを各分野に供給している。

現在、欧州全体で高炉メーカーは脱炭素対応の転換期にあり、コスト上昇と米国の新たな鉄鋼関税(25%)という逆風にも直面している。英国内のエネルギー価格の高さも加わり、UK Steel協会は競争力維持のために安価な電力政策を訴え続けている。

今後の課題は、政府の短期的な救済策だけでなく、民間投資家との連携によってブリティッシュ・スチールの長期的な持続可能性を確保することにある。


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