トランプ再登場で揺れる世界経済と金市場の急騰

金市場

関税攻勢がもたらす混乱と安全資産としての金の存在感

2025年1月の再就任からわずか100日足らずで、ドナルド・トランプ米大統領(第47代)は世界経済のルールを根底から覆し、市場に混乱をもたらした。予測不能な関税政策が米国の主要貿易相手国のみならず、世界の投資家心理を冷やしており、金やスイスフラン、円といった「安全資産」に資金が流入している。

米株とドルが急落、代わって金が最高値を更新

S&P500指数はトランプ再登場以降で約11%下落し、米国株の魅力を象徴してきた「米国例外主義」への信頼は揺らいでいる。米国債の売り圧力も強まり、10年債利回りは20年ぶりの急上昇を記録。これによりドルは1月から約9%下落し、1971年の金本位制廃止以来最悪のスタートとなった。

こうした背景から、金価格は4月下旬にかけて1オンス=3,500ドルを突破し、過去最高値を更新。これはトランプの関税政策がもたらすインフレ懸念とドル安が直接的な要因だ。2024年から続く上昇基調を強め、今年に入ってからだけで約21%の上昇を記録している。

安全資産としての金属の重要性が再認識

金融市場の不安定化に伴い、投資家の間では実物資産への関心が再燃している。特に金は、ドル安時に相対的な価値が高まるため、ヘッジ手段としての役割を強めている。さらに、トランプ政権によるFRB(米連邦準備制度理事会)への圧力や金融政策への干渉が懸念される中、金のような中央銀行から独立した資産への信頼は増している。

一方、米国の保護主義的措置が世界経済の減速リスクを高めており、世界貿易機関(WTO)や国連貿易開発会議(UNCTAD)は2025年の世界成長率を2.3%と予測、2024年の2.8%から減速する見通しだ。JPMorganは米国と世界のリセッション確率を60%、Goldman Sachsは45%と試算している。

トランプ氏の貿易戦争は、単なる関税の問題にとどまらず、金属市場にも波及効果をもたらす。今後、貴金属の価格は地政学的リスクや通貨不安と連動しながら推移する見通しで、金属業界にとっては戦略的なリスクヘッジがこれまで以上に重要となるだろう。

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