インド鉄鋼業界、EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)に直面

SAIL

欧州市場への輸出競争力が危機に

インドの鉄鋼業界は、欧州連合(EU)が導入する炭素国境調整メカニズム(CBAM)により、今後大きな課題に直面する。EUは2025年から環境規制を強化し、2034年までに完全実施する予定だ。これにより、インド鉄鋼業界が低炭素技術の導入を加速しなければ、多額の炭素コストが課せられることになる。

現在、インドの鉄鋼業界は主に石炭をエネルギー源としており、世界でも高い炭素排出量を記録している。EUのCBAMでは、鉄鋼の炭素排出量に基づいた課税が行われ、2030年までに最大80ドル/トン、2034年には116ドル/トンに達すると見込まれている。Rystad Energyの調査によると、同年にはインドとロシアの鉄鋼業界が世界で最も高額な炭素コストを負担する可能性がある。

主要企業の対応策と課題

インドの鉄鋼大手であるタタ・スチール(Tata Steel)やJSWスチール(JSW Steel)は、再生可能エネルギーの導入や炭素回収技術の活用を進めている。例えば、タタ・スチールは2024年3月までにルディアナで75万トン/年(Mtpa)の電炉(EAF)を稼働させる予定であり、ジャムシェードプルには炭素回収プラントを建設している。また、同社は379メガワット(MW)の再生可能エネルギーを確保し、低炭素化を推進している。

一方、JSWスチールは2050年のネットゼロ達成を目指し、5億ドルのサステナビリティ関連債券を発行、バイオマスや水素の活用を進めている。同社はさらに10億ドルを脱炭素化に投じる計画だ。

政府の取り組みと今後の展望

インド政府もグリーンスチールの認証制度を導入し、低炭素技術への移行を後押ししている。2024年12月には、生産時の二酸化炭素(CO₂)排出量が2.2トン未満の鉄鋼を「グリーンスチール」とし、1.6トン未満の場合は最高評価の「5つ星」を付与する制度を発表した。さらに、公的プロジェクトでのグリーンスチール使用義務化も検討されており、国内市場にも影響を及ぼす可能性がある。

しかし、インドの鉄鋼大手5社(タタ・スチール、JSWスチール、ジンダル・スチール&パワー(JSPL)、インド鉄鋼公社(SAIL)、AM/NS India)は、今後10年間で排出量を43%削減する計画を立てているが、これはEU基準には不十分とされている。現状のままでは、EU市場での競争力低下は避けられず、インドの鉄鋼業界は更なる技術革新と投資を迫られている。

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