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U.S.スチール |
トランプ米大統領は4月8日、国家安全保障を所掌する対米外国投資委員会(CFIUS)に対し、日本製鉄(日本製鉄株式会社)による米鉄鋼大手U.S.スチールの買収提案について「さらなる措置の必要性を判断するために」再審査を行うよう正式に指示した。
これは、バイデン前政権が2024年1月に国家安全保障を理由に買収阻止の姿勢を示したことを覆す可能性がある動きで、市場では日米鉄鋼業界への影響が注目されている。
トランプ大統領の覚書が公表されると、U.S.スチールの株価は一時13.9%急騰し、投資家は買収成立への期待感を強めた。日本製鉄の株価も東京市場で翌日9.7%上昇した。
日鉄は声明で「本提携が米国の経済・国家安全保障の強化につながるとの確信を持っており、今回の動きを歓迎する」とコメントした。U.S.スチールも「トランプ大統領および政権と協力してこの重要な投資を最終化することを期待している」と述べた。
この買収案件は、バイデン政権がペンシルベニア州の労働組合支援を得るため政治的判断で妨害したとされ、日鉄とU.S.スチールは現在CFIUSと連邦控訴裁で法的争いを続けている。
米政権は先月、この訴訟の期限延長を申し立て、買収交渉継続の余地を残した。4月8日にはトランプ政権と両社が訴訟の一時停止を共同申請し、CFIUSによる再審査完了の見通しを6月5日までに示す可能性が出てきた。
一方、日本の武藤洋司経済産業相は、同日行われた石破茂首相とトランプ大統領の電話会談の内容には言及せず、「関係者間の調整を促すべく、政府としても必要に応じてコミュニケーションを図っていく」と述べるにとどめた。
この動きは、米国の通商政策および対外投資審査プロセスのあり方に再び注目を集めるとともに、グローバル鉄鋼業界におけるM&A戦略にも影響を与える可能性がある。
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